面白い分子を合成し、それはどんな特徴をしていて、ひょっとしたらなにかの役に立つかもしれない。そんな研究をやっています。新しい分子を合成しますが、作りっぱなしにはしません。なにかの役に立つ材料になることを考えます。必ず何かの役に立つ材料のみを合成するわけでもありません。幸い、ここは大学の研究室ですので、夢を大きく膨らませることを、自由に本気で考えることができるところです。また、もっといい材料になるにはどんな分子構造がいいのかを考えます。そしてまた、新しい合成をします。ときには、合成に一年以上かかることもあります。合成に成功したら、その分子は予想通りにすばらしい機能を発揮するかどうか確かめます。きっとどきどきするでしょうね。しかし、思い通りの結果は出ないことが多いです。当然、落ち込むこともあります。でもそれは失敗ではありません。失敗しても新しいコンセプトを生み出すまで考えます。そして、新コンセプトを追及したくて、あれも合成してみたい。これも合成してみたい。こんな反応を試したいという衝動に駆られるようになります。研究に夢はつきません。そんなふうに、合成研究から、新しい思想を生み出すようにしようとしています。まれに、ひょっとしたら、これはノーベル賞級か・・とか、人類を救うかもしれないとか、一瞬ですがそう思える時が一年に一度ぐらいあります。そのとき、すごく幸せです。生きててよかったと心の底から思います。それが、研究の魔力です。努力すれば、どなたも研究の魔力にはまります。