AGxKANSAI 2022 Art and Philosophy in the 22nd Century After ARAKAWA+GINS

会期: 2022年3月11 - 15日 会場: 京都芸術大学(対面+オンライン)

講演(オンライン)1(E/J)
存在はそれと関係するものに先立って存在しない

エイドリアン・ハート *日英通訳つき

※講演内で紹介された映像は以下からご覧いただけます。
https://www.neondance.org/puzzle-creature

19世紀から20世紀にかけての世紀転換期に行った美学に関する研究で最もよく知られているヴァーノン・リーは、「われわれの主観的な内面が客観的な外面に変わりうる」のはいかにしてなのかについて論じていた。1897年に『Contemporary Review』誌で初めて公刊されたリーの『美と醜』は、美術作品や建築物を目にしたときに身体に起こる物理的な変化を指摘している。彼女は物と絡み合ったわれわれの本質を暗示していた。イアン・ホッダーは『絡み合ったもの——人間と事物の関係の考古学』(2012)において、「自力運動の不能性(inertness)の欠如は孤立性の欠如と繋がっている」と示唆している。彼は、すべての外的刺激が取り除かれた暗闇の中で動けない状態で生まれ、自分自身の身体に触れることすらできず、それゆえ身体から何かを学ぶこともできない子どもを思考実験で想定し、そうした子どもだけが「事物が人々を結びつけ、支配と従属の関係へともたらす」という運命から逃れることができるのではないかと思索している。街や都市においてわれわれの環境とは、たいていの場合、構築されたものである。われわれは(荒川+マドリン・ギンズの建築作品のように)習慣・日常・受容・必然性・その他あらゆる身体的、概念的な規定へと向かう衝動すべてに抗うスマートな環境を創造しているのだろうか。そうしたものは、身体をどこへと導くのだろうか。この講演では、「建築する身体」の相互−接続性によって示され、またそれを実証する一連の介入案を提示したい。それは、構築された空間と経験とわれわれの関係を徹底的に再検討することであり、われわれの最大限の可能性を新たに考案し発見する、開かれた試みである。

エイドリアン・ハートは、振付家およびNeon Dance芸術監督として国際的に活動している。彼女は英国で幅広く活動しているほか、ロシア、ベルギー、ノルウェー、ドイツ、コソボ、日本、米国でも活動している。彼女の作品は、アーツ・カウンシル・イングランド、ブリティッシュ・カウンシル、クリエイティブ・イングランド、サドラーズ・ウェルズ、ザ・プレイス、モダン・アート・オックスフォード、グラストンベリー・フェスティバル、リヴァーシブル・デスティニー財団、英国笹川財団、サウスウェスト・クリエイティブ・テクノロジー・ネットワーク、パビリオン・ダンス・サウスウエスト、アートフロントギャラリー等から委託・支援を受けている。委託制作には、サドラーズウェルズの60歳以上のパフォーマンスグループ、カンパニー・オブ・エルダーズとの共同制作や、アーティスト/建築家のデュオ、荒川とマドリン・ギンズから着想を得て越後妻有アートトリエンナーレ(日本)で初演された「パズル・クリーチャー」などがある。

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