Program for EU-Japanology Education and Research(PEJER)
日本仏教と日本の食文化史・生活史を考察するために必要な体験学習
 
 
 

 標記プログラムは「日本」を題材とする教育研究の学際化を図るべく、教育研究領域を横断する課題を如何に設定するか、その方法を含めて学ぶことを、実施目的の一つにいたしております。
下記に計画する「日本仏教と食文化史・生活史を考察するために必要な体験的学習」は、禅宗が日本にもたらされた後に、日本仏教界に与えた影響の諸相(仏教学におけるアプローチ)を考察するために貴重な体験学習であることはいうまでもありません。ただし、この体験学習において、もう一点重要であるのは、宗教が人々の生活に多大な影響を与えることを「知る」ことであり、禅が日本人の「衣・食・住」に与えた影響を体験的に「知り得る」ことでございます。宗教史と社会史、さらには生活史を視野に、新たな教育研究領域を如何に考究するべきか、この体験的学習は必ずや、学生たちの意識を喚起するものになると存じます。日本人の生活史(とくに言えば民衆生活史)に関する考究は、より学際的な視点を必要とすることもあって、政治史などに比べますと、立ち遅れているというほかございません。
万福寺は、江戸時代に創建された後、大陸の情景そのものを写した境内であると見做されておりました。江戸時代の人たちにとっては大陸そのものであり、その文化を伝える窓口であったことが知られております。いまだ行きせぬ異国情緒に、種々に異なる生活様式を学んでいたものと推察されます。また宇治の茶も、禅文化との関わりにおいて取り上げるべき課題となります。
今回は、禅がもたらした「種々の作法」とくには「食」に関わるところを学ぶべく、体験的学習を実施いたします。万福寺に饗される「普茶料理」は、本来は、禅宗寺院で営まれる仏教儀礼において食されておりました。禅宗では「食」も修行であり、それを食する「作法」にも、禅特有の意識が投影されております。禅以前に、日本に根付いた仏教の諸宗に鑑みましても、それぞれの寺院で営まれる儀礼において、一連の「次第」を提示するうえに、「食」を明記することはありませんでした。禅宗の儀礼において「茶礼」が明示されていることが、いかに驚愕であったかが理解されます。
宇治における「茶」も、我々がよく知る「茶道」つまり千利休以前から、さまざまに日本文化に浸透しておりました。本体験的学習において、聞茶の体験を行いますのも、「喫茶」を通して、日本文化をいかにとらえ、研究課題として問題を設定することができるか模索するためです。
標記の体験的学習は、日本人の精神に多大な影響を与えた「禅」を通じて、日本の食文化史を考究するものであります。テクストに記される「作法」を文字情報としてでなく、より深く理解するために「実体験」が有効であることは言うまでもありません。
禅僧の指導を受けつつ、実際に食することを計画いたしました所以を説明申し上げるものでございます。

2008年3月29日(土)
11:00  万福寺山門 集合
11:30~ 「普茶料理」(教学部・前田和尚による解説と、大島が「禅」における食について解説)
13:00~ 万福寺拝観
        寺僧による境内解説・法話
14:00  聞茶体験(宇治市「かんばやし」)
15:00  平等院拝観
16:00  現地解散

 
 
 
 
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