Program for EU-Japanology Education and Research(PEJER)
 
 
 

京都精華大学国際マンガ研究センター 第1回国際会議
「世界のコミックスとコミックスの世界 グローバルなマンガ研究の可能性を開くために」


18日の新世代ワークショップで、関西大学「関西大学 日本・EU研究センター」の特別学術職員であるネラ・ノッパ氏が報告を行いました。今、海外では日本のマンガやアニメーション等のポップカルチャーが研究対象として注目されています。しかし、ポップカルチャーは学術的な研究対象としては、まだまだ日本では認められていないのが現状です。日本のポップカルチャーは、海外からどのような視点で見られているのかを知り、これから日本はポップカルチャーを研究課題としてどう扱うべきかの議論の手がかりを探るべく、関西大学からは大島薫教授をはじめ、本プログラムの受講生たちが参加しました。

日時:平成21年12月18日~20日 新世代ワークショップ(18日 13:00~16:00)
場所:京都国際マンガミュージアム1階 多目的映像ホール
発表者
     野田謙介(マンガ研究者・翻訳家)
     ネラ・ノッパ(ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学日本学科博士課程後期)
     パトリック・W・ガルバレス(東京大学大学院情報学環学際情報学府アジア情報社会コース博士課程)
     雑賀忠宏(神戸大学大学院人文学研究科・学術推進研究員)
     猪俣紀子(「くらしき絵本館」代表)
     鈴木繁(LeHigh University Pennsylvania)
     司会:ジャクリーヌ・ベルント

ノッパ氏のテーマ:「グローバルな『マンガ研究』は一体何を対象とするのか?ファン・アート研究の視点から」
発表内容詳細
 現代のマンガ・コミックス研究において、アマチュアが作るファン・アート、「二次創作もの」は周辺的問題と見なされている。このような作品を視野に入れずに「グローバルなマンガ研究」が果たして成り立つのだろうか。アマチュアが作る「二次創作もの」は、プロが作るオリジナル作品と明確に区別されている。しかし、それを区別しているのは、読者よりも出版社の都合によって変えられてきた経緯のある著作権法である。さらに学会・マスメディアがアマチュアとプロの作品を区別している。「マンガ・コミックス」にふさわしい作品とそうでない作品の区別は、恣意的な結論に至る危険性だけでなく、社会的に特権化されていない作者・読者層や、それが好むコミュニケーションの仕方を無視してしまう危険性をも抱えているのである。

参加報告
この発表に対し、「作者、出版年などが不明であることが多い同人誌は、学術論文の参考文献として使えるのか」という質問がありました。ノッパ氏は、同人誌のような資料を参考文献として扱いづらい、現代の学会の方法論にも問題があるのではないか、と回答しました。
 今回の「次世代ワークショップ」は、全体的に、「グローバル」なマンガ「研究」というテーマに捉われるあまり、本来何の関係もないマンガの要素を、無理に欧米文化、あるいは別分野の研究に結びつけている点もあるように感じました。「マンガ」そのものの定義があいまいであること、「マンガ」を既存の研究体系にあてはめて語ろうとするために、マンガそのものの現状から外れてしまっていることが問題として挙げられると思われます。
先に挙げたノッパ氏への意見とそれに対する反論のように、学術論文が文字資料を中心としているために、そうした資料に当てはまらない、絵画や映画など視聴覚資料の研究が立ち遅れている現状があります。今までの方法論にマンガを当てはめ、そこに当てはまらないマンガを研究対象から除外するのではなく、マンガを研究するための新しい方法を作るべきではないかと考えます。 マンガ研究はまだまだ歴史が浅く、研究方法も未成熟です。だからこそ、実際にマンガに触れている若い世代を中心として、作品そのものとそれに付随する社会状況を踏まえながらの研究が、より一層活発になることが期待されます。

竹原 千尋(関西大学大学院修士1年)










 

 


 
 
 
 
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