AGxKANSAI 2022 Art and Philosophy in the 22nd Century After ARAKAWA+GINS

会期: 2022年3月11 - 15日 会場: 京都芸術大学(対面+オンライン)

研究発表(対面)と事前録画発表のQ&Aセッション (J)

*対面、英語

関谷喬「三島由紀夫から荒川修作へ、そして荒川修作から三島由紀夫へ」(対面発表)

立石朝顕「DIYとしてのコーデノロジスト(様々な「手続き的建築」事例と、皆さんへの手続き実践のお願い)(対面発表)
* 発表資料

倉垣卓麿「The Mechanism of Not to Die」(録画発表)
* 発表資料

伊藤知宏「現代アメリカでの荒川修作の絵と僕の絵──僕の制作した荒川作品へのオマジュー作品を中心に」(録画発表)
* 事前録画発表


関谷喬「三島由紀夫から荒川修作へ、そして荒川修作から三島由紀夫へ」(対面発表)
荒川と三島の関係は、岡本太郎を介す1958年の初対面での衝突、以後の三島からの経済的援助や制作依頼とその拒絶へと続く。だが世界に向けた両者の企みは殆ど語られていない。三島の死後、夫人の促しで、負債は三島の評論集文庫表紙に曼荼羅を暗示する作品提供で贖われ、荒川にとって三島は生き続けた。1997年紐育で、その経緯を問い、荒川は否定せず。この件は2004年の学位論文や2020年の三島由紀夫研究で紹介した。両者の共通基盤は倫理、廃仏毀釈が切り裂いた神仏習合を教育勅語が糊塗し、戦後、喪われたままの仏教的道徳性。殊に、人の道の手続きと論理の構制を象徴する密教の金剛界曼荼羅が大きな意味を持つ。
『鏡子の家』(1959年)の画家夏雄のモデルは荒川と考えられる。作品の構造は曼荼羅の基本図形、八面体を準え、cleave:不一不二性へと通じる。1970年、ベネチアビエンナーレ日本館のメインは意味のメカニズム。万博会場でも同等の展示がなされ、三島の絶筆『天人五衰』は、倫理を欠く手続きと構制が仏教の不在を問う。荒川の環境形成の試みにも三島の影が読み取れ、荒川は養老天命反転地を曼荼羅のようだと評したはずである。

略歴:
1950年 福井県敦賀市生れ
1970年 金沢大学工学部入学
1976年 同大学院工学専攻科修了(工学修士)、福井工業高等専門学校土木工学科 奉職
2004年 京都大学博士(工学)
2015年 福井工業高等専門学校退職 名誉教授
以後、敦賀市立博物館協議会委員長、越前町都市計画審議会会長など

立石朝顕「DIYとしてのコーデノロジスト(様々な「手続き的建築」事例と、皆さんへの手続き実践のお願い)(対面発表)
私は本発表で、荒川修作氏とマドリンギンズ氏(以下、荒川・ギンズ)が提唱した「手続き的建築(環境装置)」を「誰でも手軽に『作れる』」と感じてもらえるよう、手続き的建築の具体的な構築/実践の手法や事例を紹介する。荒川・ギンズが提唱した「共同性」を生み出すためには、手続き的建築を通じて現れる感覚を誰もが手軽に感じ取れる必要があると考えるためだ。
そのため本発表は、荒川・ギンズの示した手続き(「暫定性を揺籃する手続き」「対比のために分散させる手続き」)と紐づけながら、立石が制作した簡素な装置や他作家の参考事例などを提示し、荒川・ギンズ以外でも手続き的建築を作ることができることを示す。また装置の構築以外にも「誰でもすぐ荒川・ギンズの手続きを実践できる」方法を提示する(たとえば立石は「晴れの日に空の青い部分を見つめる」だけで、視線の焦点が合わないことにより「暫定性を揺籃する手続き」を引き起こすことができると考える。その他にも、日常の様々な場面での簡素な実践方法を示していく)

略歴:
2009年 九州大学芸術工学部環境設計学科 入学
2011年 福岡アジア美術館「死なない子供 荒川修作」上映会に参加 以降荒川・ギンズの「手続き」を追い続ける(学部・院にて、荒川・ギンズの研究論文を提出)
2015年 福岡のギャラリーで空間アートの二人展を開く
2016年 株式会社メンバーズ入社

倉垣卓麿「The Mechanism of Not to Die」(録画発表)
現段階で設定が可能な最終課題を「死なない」ことの定義とし、そのメカニズムを解く。環境構築の要素として音の作品と「死なない」メカニズムへのアプローチにより構成。現在、様々な考察による「死なない」ことの状態が語られているが、これらを批判的に扱う事ではなく、荒川ギンズの宣言を明確に理解したい。身体の動作による「エネルギー体」の存在を検証、獲得し「共同的」に活用するために「無数の空白の再集合」から、環境の構築と「建築する身体」を実践、生命現象への連携により「死なない」ことの定義の成立を考察する。時間・空間へのアプローチとして、特に時「間」のスケールをジャグリングすることを目的に環境にインサートする「音」を制作。「死なない」ことの手前に「長寿」の設定を行い、養老天命反転地や三鷹天命反転住宅よりもインスタントにコンパクトに、人工的に繰り返し共同的に活用が可能な「エネルギー接続体」を構築・建築する。構築・建築された環境に外在化する「私たち」として、共同的な「手続き型アソシエーション」を形成し、未経験の生命の最適化が実行され、人間のコンセプトを超えること、そして「死なない」ことの次に必要な新たな課題設定が、このパンデミックを超えるためにも可能と考える。

略歴:表現の実践として、環境の構築をテーマに音楽・写真作品などを制作。荒川ギンズ研究をライフワークとして、AG1・AG3に参加。音楽作品は、坂本龍一・Luc Ferrariのサウンドを使用するコンクール、CCMCなどで入賞。CD「BOTTOMLESS / BLANK」をFtarriレーベルよりリリース。

伊藤知宏「現代アメリカでの荒川修作の絵と僕の絵──僕の制作した荒川作品へのオマジュー作品を中心に」(録画発表)
生まれや育ちに(僕も愛知県生まれ、武蔵野美術大学入学、渡米など)共通点は多々あるが、今回は僕の制作した荒川作品へのオマジュー作品を中心に話したい。
僕が荒川修作とギンズに興味を持ったのは遅く、僕が渡米した2018年、マンハッタンの高級住宅街にあるギャラリー、ガゴシアンでの彼の個展だった。「Diagrams for the Imagination」と題されたこの展覧会は、一見すると無機資な建築的な構造体がシンプルな面や線で描かれていた絵が中心だったが、どこか親近感があり、洗練された実験的な絵画は現代のどこかで作られたような新しさがあった。かのマルセル・デュシャンのガラスを思い起こさせるWaiting Voice(74-75)や一見すると色見本のようだが詩的な絵になっている“No!!” Says the Volume(78)などといったような僕が当時雑誌などでした見たことのなかった三鷹生命反転住宅のようなものとは、違った作品という印象だった。
僕の前衛芸術プロジェクト「NEW FLAG for NEW PEOPLE」は観客に生きることに前向きになってもらうことをコンセプトに作られた。それらは2018年に日本政府からの助成を受けたアーティストとして米国を訪れて以来起こったアメリカでの出来事、例えば米国への移民の特に深刻な不便、Covidによるパンデミック、大統領選挙、Black Lives Matter、国会議事堂への攻撃、そして僕とアメリカ人女性(芸術家)との結婚、日本にはない多様性のある文化の影響を受け、個人の自己主張の重要性と責任について考える機会もありそれらの環境・経験から生まれた。それらは荒川の移住してきた60年代初頭とは大きく違っていたが(重なるところも多くあったが)私はなんとかこれを消化し、自分の作品に消化できるかどうか取り組んでいるところだ。

略歴:画家、現代美術家。東京都出身、武蔵野美術大学卒業。文化庁新進芸術家海外研修制度研修員、欧州文化首都招待芸術家を経てNY在住。2021年NYファウンデーション・フォー・アーツやロバート・ラウシェンバーグ財団から助成金を得る。ホルベインスカラシップ受賞。近年は野菜、音を詩的に描くことに挑戦したり短編実験映像を制作中。

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