KANSAI UNIVERSITY

研究活動

研究活動内容

 本研究事業「ビジネスにおけるデータサイエンスの深化を目指す総合的研究拠点の形成」の目的は、これまでに培ったデータサイエンス技術を応用し、多彩なビジネス分野に対する基礎技術・アプリケーションの開発、モデルの開発、そして実践による検証という一連のプロセスを包括的、かつシームレスに行う研究体制の構築と、世界トップレベルの研究拠点を形成することにあります。

 具体的には以下のような様々なデータに関する基礎技術を用いて、応用領域におけるプロセスの実践に取り組んでいます。

顧客動線に特化したストリームデータマイニング

 消費者が商品の購入し、購買に至る一連のプロセスを解明することは、経営者側にとって最適な販売戦略を考える上で不可欠です。我々はPOSデータなどの販売履歴データに加え、RFID技術によって取得された顧客動線データを分析することで、店舗内での顧客の消費者行動を明らかにしようとしています。これら2つのデータを組み合わせると、どの顧客がどの商品をいくらで、どのような巡回経路で購入したのかがわかります。一例を挙げると、スーパーマーケットなどの小売店では、外周を回る顧客が多いことがわかっています。この様子を時系列データとして表現し、分析することで、顧客がどのエリアにどの程度滞在し、どのような順序で買い物をしたのかが見えてきます。
 例えば1日の顧客すべての購買経路を可視化するとどうなるでしょうか。このような視点は1日単位で消費者行動を分析する際に必要となります。そこで我々は動線の概念から一歩進み、顧客の店舗内での存在確率密度を計算することで顧客が訪問しやすい個所を発見する研究を進めています。顧客の存在確率とエリアごとの購買履歴データを比較し分析することで、動線データの特徴を購買情報と結びつけることができるのです。
 以上はDSラボで行われている動線データの研究の一例ですが、他にも顧客流量推定、ライセンシング、階層的ベイズモデルによる消費者行動のモデル化など、様々な研究が進められています。我々は顧客動線データの研究で消費者行動を理解するだけでなく、我々のアプローチの有用性を実店舗で検証し社会還元することまでを視野に入れ、日々研究に取り組んでいます。

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アイトラッキングを用いた消費者行動の理解と新しい売場作りへの挑戦

 近年では、RFIDによる店舗内の顧客動線データだけでなく、視線の動きを記録することも可能となりました。従来は実験室実験や被験者の顔を固定した実験が主であったため、オンラインショッピングサイトやWeb広告を対象にアイトラッキングを用いた分析が行われていました。これに対して、メガネ型の記録装置が開発されたことで、近年は実店舗におけるフィールド実験の実施も可能となりました。これにより、顧客の店舗内での巡回行動に加えて、商品や広告に対する視聴の有無、見た回数、見ている時間、見ている順番などの売場での意思決定に関する行動を明らかにすることが可能となります。
 DSラボでは、これまで蓄積してきたID付きPOSデータ、店舗内の顧客動線データに加えて、視線追跡データを取得する仕組みを構築しています。これまでのデータからは、いつ、どの顧客が、どの商品をいくらで、どのような巡回経路によって購入したかを特定することが可能となりました。ここへアイトラッキングを用いることで、顧客が興味や関心を持つものは何か、商品の配置や広告はどのくらい顧客を引きつけるのか、ものの「見方」から明らかにすることが可能となります。しかしながら、これまでの顧客の視線追跡データを利用したマイニングはあまり行われていないため、分析手法の構築や、指標としての一般化など多くの課題が残っています。
 DSラボでは、これまでに培ってきた分析手法やデータサイエンス技術を適用することで、消費者の売場の見方について、様々な角度から定量化を試みます。そして、定量化された売場の見方と消費者の購買行動の間の因果関係を科学的に明らかにします。こうした基礎理論を確立することで、将来、新しい知見に基づいた効果的な売場作りを可能にすることを目指しています。