関西大学 システム理工学部 機械工学科 機械設計研究室 メカトロニクス研究グループ

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2024年度 JKA事業の実施内容等報告



本研究は,JKAの助成金により実施されました.

 

1 事  業  名

  2023年度 橋梁の構造健全性診断のための自立型センシングシステムの開発
                   補助事業

2 実施内容及び成果

 (1) 実施内容

      自立型振動センサの開発

I.        背景

現在,日本には73万本の橋が存在する.2033年にはその63%が築後50年以上となり,急速に交通インフラの老朽化が進むと言われている.このような背景から,橋梁維持管理の効率化・省力化を目的として,IoTInternet of Things)を活用した健全性監視システムの開発が進められている.我々は,これまでに橋梁の構造健全性監視システムとして,振動センサと発電機を備えた自立型振動センサを提案した.このセンサは超磁歪材料を利用しており,この超磁歪材料が橋の振動を磁束密度の変化に変換する.磁歪材料は磁束密度の大きな変化を引き起こすため,このデバイスは橋桁の小さな振幅振動下でも高電圧を生成できる.我々はこれまで,1時間あたり約300台の車両の交通量がある橋で実地試験を行い,1時間あたり 30.3 mJのエネルギを発電することに成功している.

今年度の研究では,交通量の少ない橋梁への適用を考慮し,特に中型車両でより多くの電力を発生できるように装置の改良を行った.

 

II.      デバイスの構造

1 に振動センサの構造を示す. センサは,コイル,コイルの芯となる超磁歪材料製ロッド(磁歪ロッド),磁石,ベース,カバー,ヨークから構成される.橋に設置する際は,橋脚と橋桁の間に小さい与圧を与えるように挟み込む.橋梁の振動により磁歪棒の圧縮応力が変化し,その応力に応じて磁歪棒内の磁束密度が変化するとともに,巻回したコイルによって発電できる.

 

1:自立型振動センサの構造

III.     デバイスの改善設計

発電能力を高めるために,デバイスに三点の改良を加えた.

第一に,橋梁を通過する中型車両の発生電圧が最大になるように磁歪材料へのバイアス磁界を調整した.また,そのバイアス磁界を印加するようにセンサの磁気回路設計を見直した.

第二に,センサのサイズを大きくした. 従来品に比べ,同線径でコイル体積を大きくし,コイルの巻き数を約14倍とした.磁歪ロッドは,同じ外径を持つ以前の設計よりも2.5倍長くなり,磁歪棒の軸方向剛性がセンサ支持部の軸方向剛性に比べて低下し,橋桁の変位により磁歪棒が効果的に圧縮され,磁束密度の変化を促進する.改良型デバイスの仕様を改良前と比較し,表1に示す.

第三に、磁歪材料に均等な圧縮応力が掛かるように、センサのカバー構造を凹凸球面の接触方式に変更した。これまでの凸面状のカバーでは、橋桁が鉛直方向に対して傾きがあるとき、大きな曲げ応力が磁歪材料に加わり(図3()),この曲げ応力による応力増加が疲労破壊を招く原因になり得る。そこで,図3()のように,凹凸球面による接触方式を採用した.この改善設計の効果を,数値解析で確認した.橋桁が橋脚に対して3°傾いた状態で,大型車が通過したと想定して解析を行った.解析ソルバにはANSYSを用いた.図4は,磁歪材料内部の半径方向位置に対する応力の分布を示す.図は,曲げ応力の最大・最小応力を示す位置を繋いだ直径に沿った応力分布を示している.図のように,これまでの設計では,曲げ応力が原因となり最大・最小応力の間には40MPa程度の差があり、最大応力は120MPaである.この最大応力は,橋桁の傾きが大きくなれば一層大きくなる.一方,改良設計では,ほぼ均等に100MPaの応力が加わっており,橋桁の傾きの影響を受けない設計となっている.

 

1:改良型センサと従来センサの仕様比較

Sensor device

This study

Previous study

External diameter [mm]

92

40

Height [mm]

98

43

Coil wire diameter [mm]

0.3

0.3

Number of coil-turns: N

14295

1033

Coil resistance: R

519

15.9

 (×104)

39.4

6.71

 

図2 橋桁に傾きがあるときの従来センサ(左)と改良センサ(右)の設置状態
図3 橋桁に傾きがあるときの従来センサ(左)と改良センサ(右)の応力分布

 

IV.      開発センサの実地試験

前項の改良設計を行い,自立型振動センサを試作した.そして,兵庫県伊丹市の神津大橋,並びに京阪電鉄宇治川橋梁で実地試験を行った.神津大橋では以前からセンサの実地試験を行っているが,実験開始当初からは支承の交換工事が終えられており,車両の通過に伴う橋桁の振動振幅の標準偏差は,支承交換の前後でそれぞれ70.5μm 27.1μm と約62%も振動が低減されていた.今回の実験は,このように振動が低減された中での過去のデータとの比較となっている.

図5に,実地試験における自立型振動センサの評価装置を示す.装置は橋桁と橋脚の間に挟まれ,磁歪ロッドに10 MPa の与圧を与えた.磁歪ロッドの円筒面にひずみゲージを120度間隔で3枚貼り付け,磁歪ロッドのひずみを同時に評価した.また,レーザー変位計を用いて橋梁の振動も同時に計測した.自立型振動センサのコイルとセンス抵抗を直列に接続し,センス抵抗の両端電圧をデータロガーを用いて測定した.発電電圧は,コイルの内部インピーダンスとセンス抵抗の値から計算により求めた.

図5 実地試験における自立型振動センサの評価装置

 

図6にバス通過時の橋桁振動とひずみゲージ出力から計算した磁歪ロッドの変形を示す.磁歪棒の剛性を低下させたことにより,磁歪棒の変形量は橋振動の22.2%に達し,従来装置の11.8%に比べて約2倍に達した.図7に自立型振動センサの発電電圧の時系列を,図8に発電電圧から計算した発電電力を示す.今回の設計では、これまで4.4倍に相当する1時間あたり134.2mJのエネルギを発生することが確認できた.一回の健全性診断に必要な電力量は500mJと見積もっており、1~2日に一回の健全性診断には十分な発電電力が得られているといえる.

図6 バス通過時の磁歪ロッドの変形     

図7 自立型振動センサの発電電圧

グラフ, 折れ線グラフ

自動的に生成された説明

図8 自立型振動センサの発電電力の積算

 

V.        大型車両通過台数の計数に関する研究

橋梁の累積損傷は通過した車両の軸重に大きく影響を受ける.橋梁の損傷は、大型車両の通過によって引き起こされているといっても過言ではない.そこで、橋梁の損傷の進行を推定する方法として、開発しているセンサの電圧波形から、大型車両の通過台数を計数する方法を検討した.今回は、車両通過に伴う自立型センサの出力波形の解析をニューラルネットワークの一つである長短期記憶(LSTM)ネットワークによって行なうことで、車両の大きさの判別をおこなった. LSTMは、時系列データの学習と予測に優れており、機械の故障予測や、COVID-19の流行傾向の予測などに使用された例がある。本研究ではPython ニューラルネットワーク・ライブラリKerasに含まれる LSTM を使用した.

図9は、橋梁上を車両が通過していないときの振動センサの出力電圧を示す。この振動は、風や近くの道路を走行する車などの振動源によって励起される橋の常時微動である。

この常時微動の時刻歴波形をもとに学習させた。続いて、出力電圧の時系列データをLSTMモデルに入力し、予測結果を得て、実際の波形と比較した.なお、隠れ層の数は 35、入力と出力シーケンスのタイム ステップはそれぞれ 10 3 に設定した.これは、最新の10データの値から次の 3 つの予測値が計算される構造であることを意味している。実際の出力電圧値と予測値に大きな差がある場合、その差が異常な状態を示しており、車両の通過を意味することになる.

車両走行時のセンサ出力の一例として、図10のミキサー車が左折して橋に進入したときの出力電圧波形を図11に示す。t = 9.5 秒まで、車両の通行はなく、振動はごくわずかであった。t = 9.5 秒と 10.7 秒で、ミキサー車の前輪と後輪がそれぞれ橋桁に突入し、大きな電圧が発生た。車両が左折したため、左右の車輪が橋桁に到達時間にわずかな差があるため、前輪と後輪が橋桁に到達したときにそれぞれ2回の急激な電圧スパイクが発生している。その後、橋梁の固有振動による残留振動が観測されるが徐々に減衰している。図11の波形をLSTMに入力したときの、LSTMの出力と実際の波形の比較を図12に示す.車輪の通過時に大きな差が生じている.この差を定量的に比較するために、マハラノビス距離を求めた.マハラノビス距離は、分散を考慮した常時微動からのずれの大きさを意味しており、 の式より求められる. は、それぞれ実測値と予測値を表す。また、 は正定値共分散行列である。車輪の通過のタイミングでマハラノビス距離が大きくなっており、車両の通過を検知することが可能である.

図 橋梁の常時微動によるセンサ出力波形.

図10 ミキサー車の通過

図11 ミキサー車通過によるセンサ出力波形.

図12 センサ出力とLSTM予測の比較

図13 マハラノビス距離

作成したLSTMによる車種判定プログラムを用いて、マハラノビス距離を出力し、その大きさから通過車両の分類を試みた.なお、電圧波形とともに記録されている通過車両が動画で記録されており、実際に通行した車種を知ることができる.本研究は大型車の台数を計数することを目的としているが、車種をサイズ別(小型、中型、大型)3種類に増やし判別を試みた.車両のサイズは、マハラノビス距離の大きさに応じて分類した。この分類方法は単純で、他のAI手法と比較してトレーニング時間が極端に短いという利点があ

表1に調査結果を示す大型車両の計数精度は84.5%、全体正解率は90.2%であった。ただし,対向車線の車両通過によって発生する電圧誤差要因となることが判明したため、現在その対策を検討している

 

VI.      鉄道橋橋脚の固有振動の検出

橋脚の洗掘は、川の流れが基礎の周りの土砂をさらい流す現象であり、橋脚の支持強度を低下させる.大雨の後など、川の流れが速い場合に顕著に進行する.橋脚の洗掘が進むと、橋脚が沈下したり傾いたりして、重大な事故や橋脚の長期供用停止につながる可能性がある.迂回路をもたない鉄道橋では洗堀による支持強度の低下がもたらす影響が甚大であり、定期的に橋脚の固有振動数を計測し、支持強度の評価を行っている.

これまで日本では、地盤や橋脚構造物の強度の指標として、30kg以上の重りを用いて橋脚に衝突させ励振することで、橋脚の固有振動数を測定する方法が取られている.しかし、人手と労力を要するため、日常的な測定には適しておらず、測定は510年に1回行われている程度である.そこで、東日本旅客鉄道()では、橋脚上部に傾斜計を設置し、その傾きを測定することで、洗掘の影響を監視するなどの方法をとっている。しかし、この方法では基礎地盤や橋脚構造物の強度を評価することはできないため、列車が橋の上を走行する際の橋脚の振動振幅を測定する機能を追加し監視している。

我々は、開発中の自立型センサを用いれば、外部電源を使わずに橋脚の固有振動数が測定できると考えた.その第一歩として、開発した振動センサを用いて橋脚の固有振動数を測定できる可能性を検討した.京阪電気鉄道株式会社(京都府八幡市)の宇治川橋梁で実証実験を行なった。この橋梁は、長さ263m7スパンのトラス橋であり、ローラー支承で橋桁を支えている。橋脚の固有振動数の計測はP5橋脚で行った.

はじめに、橋脚の橋軸方向(レール沿線)の振動を、加速度センサ(NP-3110、小野測器)を用いて測定した。橋脚には2つのセンサ (Ch. 1,2)を設置した.これらは、下り方向線(大阪→京都)の地上から3.09m2.09mの位置に設置した.列車が橋を走行中に2.753.243.604.154.97Hzのピークが観測された。一方、列車が走行していないときはペクトルにピークは観測されなかった.京浜電気鉄道によるこれまでの測定結果を考慮すると、2.75Hzのピークは橋脚軸方向の振動モードであると推定される.

次に、開発した加速度センサを支承付近の橋桁のch.1センサの隣に設置した.センサ出力電圧は、開発したデータ伝送モジュールを使用してPCに送信した.このモジュールは、MCUとしてSTM32L4を使用し、12ビットのA/Dコンバータ(ADC)を搭載してる。このADCを使用して、240Hzのサンプリングレートで8280のデータポイントの時系列をしました採取した。データ取得後、無線通信プロトコルであるLoRaを用いて時系列データを送信した。振動データは10分おきに自動的に計測・送信した。よって実験中に37件のデータが送信された。ADCの入力電圧は±3V以内に制限されており、列車通過後の残留振動や微動を測定するために、走行時には出力電圧が飽和するほどセンサの出力感度を上げ測定した。

残留振動波形から算出したセンサ出力電圧のスペクトルからは,明確に2.72Hz3.22Hzのピーク時の桟橋の固有振動数が検出されることが確認された。

また、常時微動データを平均して得られた変形速度のスペクトルにおいても2.75Hzの橋脚の振動モードが明確に観察された。この結果から、開発したセンサは振動検出感度が十分高く、常時微動から2.75Hzの桟橋の第1振動モードを検出でき、洗堀の常時モニタリングに利用できる.

 

図14 常時微動による自立型センサの出力のPSD

    蓄電・データ送信モジュールの開発 (合同会社かちクリエイトに委託)

1.   背景

20223月に試作した蓄電・データ送信モジュールをこれまで評価してきたが,蓄電池の容量が大きいため蓄電性能が正確に把握できずにいた.このため,自立型振動センサによる発電電力と健全性診断およびデータ送信に必要な消費電力とのエネルギ収支について,完全な理解には至っていなかった.また,ファームウェアの書き換えのためのツールの構築ができておらず,実地試験での測定条件を自由に変えられなかったため,効率的な実験ができずにいた.

2023年度の前期(4月~9月)では,これらの問題を改善するとともに,現行試作モジュールの問題点を洗い出し,次回試作の設計にフィードバックし,完成度を高めることを目的として開発を行った.これらを短期間で完了させるためには,電気回路およびファームウェア開発の経験が必要であるため,合同会社かちくりえいと業務を委託した.

後期(10月~3月)には、前期の結果を踏まえ、二次試作の設計仕様を決定し、二次試作を行った.設計仕様決定のための予備評価についても、前期と同様に合同会社かちくりえいと業務を委託した.

一次試作モジュールは、蓄電・データ送信の諸々の可能性を検討できるように、必要となる可能性のある機能は全て入れ込んだ多機能なモジュールであったため、サイズも大きくなり、結果として十分な性能を得ることもできなかった面もある.そこで、以下の評価結果を考慮した上で、必要最小限の機能に絞ったモジュール構成とし、サイズもこれまでの8分の1程度まで小型化した設計とした.

 

2.評価結果

1)一次試作モジュールの評価と問題点の洗い出しと、二次試作モジュールでの対策

 2021年度に試作したモジュール(一次試作モジュール)では,蓄電性能が著しく低いことが問題として上げられた.評価の結果、この原因として二点が考えられる.一点目は、発電した電圧をADCと蓄電マネジメントICへの入力のいずれかに切り替えられるようスイッチが入れられており、このスイッチにおいて消費電力が大きく,蓄電性能が低く抑えられてしまっている.また、もう一点はアナログ・デバイセズ製の超低消費電力のエネルギー・ハーベスタ・パワーマネジメントユニット(ADP5091)を使っており、この耐圧が3.0Vであるため3.0V以上の電圧を保護回路でカットしていたことも原因である.これに対して、本研究における二次試作では、振動検出用コイルと発電用コイルをセンサ側で分けることにより、スイッチを削除すること、および、蓄電に日清紡製マイクロデバイス製の降圧DC/DCコンバーター(R1801K:耐圧6.5V)を使用し、蓄電効率の向上を図ることとした.

また、別の問題として、一次試作モジュールでは、起動しただけで、20A程度の電流が流れ続け、消費電力が増大する問題があったため、二次試作モジュールではこの点も改善するよう設計仕様に盛り込んだ.現時点でも評価結果では、モジュールの起動で流れる電流は2mA程度と小さくなったが、さらに低減するよう改善対策を行っている.

二次試作モジュールで一回の健全性診断に必要な電力量を求めた.データの取り込みに260mJ、データ送信に4.8mJ が必要であり、一回の健全性診断には265mJ の電力が必要であると求められた.

なお、二次試作モジュールの評価は、今後も継続して行う.

 

2)ファームウェア書き換え環境の構築

一次試作モジュールのファームウェアを書き換えるためには,ファームウェア開発環境の構築が必須である.今回IAR社の統合開発環境EWARMを導入し,ファームウェアの書き換え環境を構築した.これにより,今後,ファームウェアに橋梁の健全性診断のためのプログラムを書き込むことができるようになり、送信データ桁数の改善、サンプリング周波数の変更、送信データ数の変更が適宜行えるようになった.しかし、ファームウェアの構造が複雑で、A/Dコンバータから取り込んだデータを用いて健全性指標を導く計算処理プログラムを書き込むことが困難であった.

そこで、二次試作モジュールではファームウェアの構造も単純化し、データ配列などの変数が分かりやすい構成とした.また、二次試作モジュールのファームウェア書き換え環境の構築も行った.

 

     超磁歪材料の開発

センサ開発のためには磁歪材料の磁気特性を評価することが必要である.開発中の自立型振動センサに歪みを与えるためには,10kNもの荷重が必要であるため,島津製作所の加圧試験器を導入した.この装置を使い、住友金属鉱山製 S-Bulk および、日鉄ケミカル&マテリアル社製の磁歪材料の磁気特性の評価を行い、基礎的な磁気特性の把握が可能な実験装置の構築が完了できた.今後も、今回構築した測定装置を利用して、材料メーカとともに高い磁気特性が得られるような材料開発に活用していく.

一方で、これまでの実地試験の結果から、高周波領域(数百Hz程度まで)の動的磁気特性の把握もさらなる性能向上には必要であると判断し、国内では有数の加振機メーカであるIMV社製の加振器を用いた予備実験を行った.しかし、IMV社の加振器は電磁力による加振機であるが、与圧の印加が難しく磁気特性の測定が困難であると結論付けた.そこで、与圧の印加が可能な加振実験装置を新規に設計することとした.20241月に設計に着手しており、2024年度内に、動的試験装置の立ち上げを行う.

 

 その他

I.    IEEEの磁気関連としては最大の国際会議であるIntermag2023(仙台で開催)に参加し,磁気センサ関連研究の調査を行った.
2023年5月17日~19日

II.  日本機械学会2023年度年次大会(東京都立大学)に参加し、構造健全性診断システムのための自立型センサデバイスの磁気回路設計について発表した.

2023年9月3日~6日.

III.  IEEE Sensors 2023 に参加(ウィーンで開催)に参加し、自立型振動センサの出力波形分析による大型車両の通過台数の計数に関して発表した.
2023年10月29日~11月3日 
PowerMEMSへの参加のため、本学会の渡航費は別経費から支出)

IV.   PowerMEMS 2023 IEEE共催)に参加(アブダビで開催)し、自立型振動センサの開発について発表した.
2023年12月11日~12月16日  

V.    日本機械学会 IIP 2024 に参加(岡山で開催)に参加し、自立型振動センサの開発について発表した.
2024年3月4日~3月5日 

 (2) まとめ

       自立型振動センサの開発

I.        交通量の少ない橋梁にも開発システムが適用できるよう、自立型振動センサの改良設計を行った.実地試験の結果、これまでの4.4倍に相当する1時間あたり134.2mJのエネルギを発生することが確認できた.一回の健全性診断に必要な電力量は500mJと見積もっており、1~2日に一回の健全性診断には十分な発電電力が得られているといえる.同時に、曲げ応力を低減できる構造への変更も行い、応力を約20%低減できた.

II.      橋梁の構造物の累積損傷を推定することを目的とした、橋梁を通過する大型車両の新規カウント手法を提案し、長短期記憶(LSTM)ネットワークによる車種判別ソフトウェアを開発した.そのソフトウェアで実際の波形から通過車両の車種判別を行った結果、大型車両のカウント精度は84.5%であった.精度向上の必要性はあるものの、開発したセンサの出力波形を用いて橋梁を通過する大型車両の台数をカウントでき、橋梁の損傷度合い推定に適用可能性を示した.

III.     鉄道橋の橋脚の洗堀を検知するためのセンサに応用できるかを、実際の鉄道橋を使い評価した、その結果、開発したセンサは振動検出感度が十分高く、常時微動から橋脚の振動モードを検出できることが確認できた.これをモニタリングすることにより、橋脚の洗堀を検知できると期待できる.

 

   蓄電・データ送信モジュールの開発 (合同会社かちクリエイトに委託)
待機時の低消費電力化および蓄電効率の向上を目的として、日清紡マイクロデバイス製の降圧DC/DCコンバーター(R1801K:耐圧6.5V)を使用した蓄電・データ送信モジュールの試作を完了した.モジュールの起動で流れる電流は2mA程度と小さくなったが、さらに低減するよう改善対策を行っている.二次試作モジュールの評価は、今後も継続して行う.

 

   超磁歪材料の開発

島津製作所の加圧試験器を導入し磁歪材料の磁気特性の評価装置の構築が完了できた.

動的磁気特性の把握もさらなる性能向上には必要であると判断し、新たな加振実験装を設計している.

 

 

3 本事業による論文等

 

[1].  Masaya Hatanaka, Shinji. Koganezawa, Hiroshi. Tani, Renguo. Lu, Shouhei. Kawada,”Improvement in Power Generation Capability of a Self-Powered Vibration Sensor for Bridge Structural Health Monitoring System,”2023 IEEE 22nd International Conference on Micro and Nanotechnology for Power Generation and Energy Conversion Applications (PowerMEMS), 11-14 December 2023, DOI: 10.1109/PowerMEMS59329.2023.10417614.

[2].  Shinji Koganezawa, Futa Matsumoto, Hiroshi Tani, Renguo Lu, Shouhei Kawada,”LSTM-Driven Vehicle Counting for Bridge Health Monitoring with a Magnetostrictive Vibration Sensor,” 2023 IEEE SENSORS, 29 October 2023 - 01 November 2023, DOI: 10.1109/SENSORS56945.2023.10325112.

[3].  畑中 雅也, 小金沢 新治, 弘詞, 仁国, 川田 将平,”凹凸球面接触を利用した磁歪型振動センサの曲げ応力の低減,”, 日本機械学会 IIP2024 情報・知能・精密機器部門講演会、202434-5日、IIPH-2-4, 岡山大学.

[4].  寺井 駿矢, 畑中 雅也,小金沢 新治, 弘詞, 仁国, 川田 将平,”自立型振動センサを利用した交通インフラの構造健全性診断システムの開発,” 28回関西大学先端科学技術シンポジウム, 2024年1月25-26日、関西大学.