石 川 正 司
本学化学生命工学部教授。
1987年大阪大学大学院工学研究科博士課程修了。同年鐘紡株式会社開発研究所。1991年山口大学工学部助手、のち、1997年同大学助教授。2003年より本学に着任され、2005年より教授。
専門分野は電気化学、エネルギー化学で、特にリチウム二次電池や高性能キャパシタの開発を手がける。
石川正司教授、文部科学大臣表彰受賞!!
このたび、石川正司化学生命工学部教授が「材料界面の積極的制御による蓄電デバイス高性能化の研究」で平成24年度文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞しました。
石川教授は、これまでにリチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタという電気エネルギーを貯めるデバイスについて研究を行っており、近年では受賞対象となる「材料界面」に注目して、これらの蓄電デバイスの高性能化を目指しています。 リチウムイオン電池などは主に2つの電極とその間に存在する電解液と呼ばれる材料から構成されており、従来は各々の材料自体を工夫することが中心でしたが、石川教授はナノ材料やイオン液体などの先進材料を適用し、それぞれが形成する「界面」を制御するという斬新なアイデアで、2つの世界最高性能を達成しました。
イオン液体を適用した高安全性リチウムイオン二次電池
従来のリチウムイオン電池は可燃性の有機電解液が用いられており、電気自動車など大型用途に対して、その高性能化と安全性の両立が困難とされています。「イオン液体」は主に有機系のカチオンとアニオンから構成される「塩」であり、有機物でありながら難燃性を示します。さらに電気を流す性質があることから、次世代の高安全性リチウムイオン電池用電解液として注目されてきました。 石川教授はイオン液体のみを電解液として利用したリチウムイオン電池の作動に世界で初めて成功し、また、このイオン液体が形成する「界面」の性質から、従来以上の高性能電池が構築できることを発見しました。
多層カーボンナノチューブを電極に用いた世界最高速度のスーパーキャパシタ
スーパーキャパシタは電池同様電気エネルギーを貯めることができるデバイスですが、その蓄電メカニズムが電池と異なり、瞬間的に大電流を充電・放電できます。したがって、大型の自動車や電車、電動クレーン、非常用電源として身近に利用されています。このスーパーキャパシタには一般的に活性炭が利用されていますが、石川教授は「多層カーボンナノチューブ」を綺麗に並べた新しい電極を利用し、電極側からの特殊な「界面」を形成させることにより、従来のスーパーキャパシタの10倍以上となる世界最高速度を達成しました。
以上の技術は、電気自動車の普及の突破口となるでしょう。またこの技術は将来の自然エネルギー(風力や太陽光)への展開においても、重要な役割を果たすことができ、日本はもちろん、世界のエネルギー問題の解決に大きく貢献するといえます。